古屋兎丸/乙一『少年少女漂流記』(ISBN:4087748545)

少年少女漂流記
評価:★★★★☆+

天才×天才の豪華コラボレーション!
この世界で居場所を見つけられず苦しむ少年少女たち。彼ら彼女らが作り上げた妄想とその行き着く先は――。ストーリーもビジュアルも完全合作。迷える10代の心を切なく描き出す超豪華コミック。

小説すばる」で連載されていたのをまとめたもの。連載されていたのは途中までは読んでいたように思うのだが、残り半分くらいはこの単行本で初めて読む。それにしてもこの単行本、まさかの箱入りである。ただその箱には穴が空いていて、デザイン的にも有効に使われていて、箱がなくても成立しそうな感じもする「講談社BOX」とは一線を画している。まあ細かいことなんだけど。
少年少女の葛藤が具現化したりする、というのは梨屋アリエプラネタリウム」シリーズに通ずるものがあるなあ、と思ったりもした。アイデア剽窃を摘発しているのではない。別にこの二作に限らずこういったアイデアを用いた話はほかにもあるだろうし。
数ある短編の中、最もおもしろかったのが第3話「魔女っ子サキちゃん」。この話は特によくできていると思う。また、第5話「お菓子帝国」はほかの短編とは色が違っていて、良い感じだった。生八橋の襲ってくるイメージはなかなかシュール。
そして、最終話「ホームルーム」があったからこそこの話は最高のものとなっているように思う。第7話「たいと様を見つけたら」*1から「ホームルーム」へのつなぎの要素が見られるのだが、この最終話があるのとないのとでは大違いである。

*1:「たいと」という漢字は表示できないのでひらがなで代用。漢字で書くと「雲」三つに「龍」三つを上下に重ねる。